2012年12月27日木曜日

The BirthdayツアーVISION@日本武道館.ライブレポート

の座った1階南席はまさにステージどまん前でした。そこから見えるアリーナ席の人々の姿――豹柄、豹柄、ツアーTシャツ、黒、黒、黒、コート着たまま、グレー、ツアーTシャツ、ツアーTシャツ、ボーダー、黒――を眺めつつ、武道館の高い天井付近でゆっくりとたゆたう白い大気と、「携帯電話のカメラなども使用できません」という拡声器の声に包まれながら、じっと開演を待っていました。

 The Birthday、5年ぶりの武道館公演。5年前のことを知らない僕は、メンバーのヒライハルキが書くコラムによってしか、そのときの悔しさや無念さを推し量ることができません。
 しかし、ここに座る僕たちは、特に今ツアーを一度でも観た人間ならば、そんな彼の気持ちに笑いながら肩をバシリと叩いて言ってやりたくなるのでした。今度は最高に決まってるだろ――そうでなければ、僕が隣の席の小父さんににっこりと微笑まれるサーヴィスを受けたり、彼に返したつもりの笑顔が、別の女の子に伝わって笑い返されたりする、なんていうことが起きるわけがないのでした。


The Birthday TOUR 2012 "VISION" FINAL
@日本武道館 2012年12月19日















う確信しながらも客電が落ちたときのあの熱狂と歓喜――沸騰したお湯が吹きこぼれるかのように、ほとんどすべての観客が椅子を捨てて立ち上がった瞬間――には驚かされ、一方で、この興奮は最後まで決して冷めるはずなどない。という強い予感を抱きながら、1曲目の[黒いレイディー]が早くも伝える演奏の良さ・耳から入って心臓を叩きのめす爆音の快感を余すところなく浴び、特にフジイケンジのギターソロのアレンジや音に「うわー」とか「あー」とかそんな歓喜を口からこぼし続けて、気付いたら5曲目の[Riot Night Serenade]まで来ていました。


 ニルヴァーナの再結成が話題になるとか、レッド・ツェッペリンのライブ盤が飛ぶように売れるだとか、ロックの世界が「老いてますます壮んなるべし。」という諺を体現しはじめて久しいですが(同じ構造をもつ世界はアニメ界ですね。10年後でもエヴァはぶっちぎりで劇場動員数を出すでしょうし、『風の谷のナウシカ』と現代社会の結びつき。なんていう論文が新しく上梓されるかもしれません。)そのなかでThe Birthdayの「若さ」は、ずいぶん特異なもののように感じられます。
 ツアー2ヶ所目の清水SOUND SHOWER arc.で僕が観た『VISION』収録曲の演奏は確かに荒っぽかったのです。しかし、2ヵ月半という時間をかけて成熟したそれらは、武道館でめいっぱい僕らを爆発させました。そんな少年たちの夏のような・歯車ががちりがちりと組みあがっていくような「成長」という若さの特権を、いかんなく発揮する彼らの年齢をはたと思い出して、[KICKING YOU]の途中、僕は少し笑ってしまうのでした。
 なにより、結成当初、チバユウスケ・クハラカズユキという「元Thee Michelle Gun Elephant」なんて肩書きのついたメンバーのなかに放り込まれ、「大人」にならざるを得なかったヒライハルキが、ようやく本当に最年少らしく振舞って、無我夢中に演奏する姿に、ほらねちゃんと最高じゃんか。とウインクを投げてまた踊り、踊り、踊りながらやっぱり笑うしかありません。


 1階南席は、張り出した2階席の天井に音が反響してしまい、高音の聴こえかたがやや辛かったのですが([ホロスコープ]のギターソロに、なぜかグレッチを被せて高音を全部台無しにしてくれたチバユウスケを一瞬ぶん殴ってやろうか。と考え(笑)そのあとすぐに「おお、そうだよな、テンション上がっちゃうよな、あんなにカッコいいギターが隣にいたら。」と思い直して、心の中でがっちり握手しました。)それでもなお美しい[SHINE]~[爪痕]、もちろんあの場にいた全員があのたった一人のことを考えながらチバの声に目を向けていました。静寂――と言っても過言ではない呼吸だけの観客席、武道館の天井にくっついた小さな小さな照明が星座のようです。
 しかしてそこから始まる[Red Eye]の艶かしさ、メンバー同士が熱く互いを見据えるこの曲をきっかけに、さらに気持ちよくなっていく4人のグルーブでくらくらしていたら、[なぜか今日は]で突然の銀紙特効……フジイケンジのあのギターの音を背景にばあっと広がった光。に無数の手が突き上げられて、「やっぱりこれは夢なんだな。」と思わずにはいられませんでした。でも、「サンデイ・新宿網タイツ…」と続く音は現実そのものです。

 最高の時間、[さよなら最終兵器]のチバの熱唱に泣かされた僕は、流れるものはそのままにただただ拍手を送っていました。
 僕は本当に前の武道館のことを知りません。ただ後日、この日の武道館のことをハルキコラムが喜びでいっぱいの言葉で飾ってくれたのを見たとき、僕は浅草橋を通過する地下鉄の中、つり革につかまりながらうっとりとあの日の愛しい耳鳴りが治まってしまったことを嘆くのでした。


[SET LIST]

01. 黒いレイディー
02. ゲリラ
03. Buddy
04. ROKA
05. Riot Night Serenade
06. KICKING YOU
07. ホロスコープ
08. YUYAKE
09. SHINE
10. 爪痕
11. Red Eye
12. LOOSE MEN
13. PINK PANTHER
14. SPACIA
15. LOVE SICK BABY LOVE SICK

16. カレンダーガール
17. OUTLAW Ⅱ
18. なぜか今日は
19. さよなら最終兵器
20. BECAUSE

encore1.
01. STORM
02. 涙がこぼれそう

encore2
01. 泥棒サンタ天国
02. ローリン

encore3
01. READY STEADY GO

 チバの「ニッポンブドーカン!(キュウちゃんが何かを突っ込む。のを遮ってもう一回)ニッポンブドーカン!!」というMCに、ただただ返される歓声。あふれる喜びは、アンコールでステージに帰ってきたときの彼の満面の笑顔と「いいねえ」という言葉にもはっきりと表れていました。(大原康生)

The BirthdayツアーVISION@清水SOUND SHOWER arc.レポートはこちら

2012年12月19日水曜日

THE INRUN PUBLICS.PUBLIC CORE.レビュー

THE INRUN PUBLICS - PUBLIC CORE〈歴史は何度だってロックンロールを生む〉


―うわー先輩、そのバンドなんすかあー、名前、ヤバいっすね(笑)

ヤバいよ(笑)久々に親に聴いてることを知られたくないバンドが出てきちゃったって感じ。まいっちゃうよな、歌詞カードにどでかくまっピンクで印刷してあるんだもん。「淫乱」って(笑)見つかったらどうすんだよお(笑)でも全体の印象は、淫乱ってよりか騒乱・動乱・混乱、きったねえライブハウス、つかねえライター、飲みかけのアルコール、一人称が「あたし」のばかな女、つまんない今日、つまんないことを吼えるしかない男。っていう、まさにロックンロール。箸休めもなく、全曲全員フルパワー音を出し続けるっていう構成にシビれた。

―それは……ロックすね(笑)

そーね(笑) しかしびっくりしたよ、事前にツイッターとかレビューを読んで買いにいったんだけど、「初期ミッシェルのような」って書いてあったんだよな。もうそれだけで敵意をむき出しにするロックファンが何人もいると思うんだけど(笑)で、ミッシェルって安直なイメージとしてやっぱりイギリスっていうのがあるじゃん? 特に初期の… [ロシアン・ハスキー]とかさ、英語詞にしたとしてまったく違和感ないし。それはミッシェルの4人の聴いてきた音楽とか好きな映画のイメージの表出だっていうのはもちろん、彼らの出身地が北海道・神奈川・広島ってばらばらなとこが大きいと思うんだよね。ひとつの故郷にしばられないから、思いっきりイギリスによれるっていう。

―うんうん。


だからそういう「ザ・UK」ミッシェルを想像して聴いたらさ、全然違うんだよ。もーすっげえ、インラン・パブリックスはがっつり「ニホン」なんだよ。しかも2000年~現在までの日本。まず曲のタイトルが[リアルワールドコンプレックス][踊るメディア]だぜ? なんつーか、現実世界≒リア充からの疎外感とか、メディアに対する不信とかを歌うのは昔からあるけどさ、タイトルの言葉の選び方がすげえ今っぽい。あと、オタク…までいかないかもしんないけど、ゲームとかアニメ好きなんじゃねえかな? [プレイステーション]って曲あるし、なんせ[ビューティフルドリーマー](笑)だからね。ラムちゃんかよっ押井守かよっつう(笑)

ーなんすかあ、それ。

そういうアニメがあったの。伝説の高橋留美子ブチ切れ『うる星やつら』劇場版ね。まあ、本当にそのオマージュかどうかはわかんないけど。歌詞も別にラムちゃんに寄せてないし。
それで、すごい「ニホン」ぽいっていうのは、やっぱり彼ら全員の出身地が長野だってところにあると思うんだよな。メロディーの流れもそうだし、感じさせる情景の日本っぽさ、なんていうの、ちょっと枯れた感じのさ、地方都市みたいな・・・金髪碧眼はひとりもいねえなって感じの(笑)。爆音でぶっ飛ばしながらも、なんか土地に染み付いている匂いがしてくるんだよ。

―オレ、地方出身なんでちょっとわかります。ちっちゃいんすよ、駅前のロータリーが(笑)で、ちょっと自転車で行くと田んぼあってー。コンビニがポプラですもん。めっちゃいやでしたよ、東京いきてえーって思ってました。

そういうのが、孤独感とか、空腹感とか、どうしようもない衝動とかになってんのかもしんない。「毎日毎晩 喉から手が出る音 メリメリ音を立てる」だもん。あ、歌詞はね、ストレートで、くどくもなく悪ぶってる感じでもなく、ただただ「オレ」っていうとこがいい。ちょっと淫乱だし(笑)「インストールするおまえの穴 ダウンロードする俺の穴から」ってね(笑)それをちょっとかすれた感じの声でシャウトしっぱなし。っていう気持ちよさ。やっぱ聴いて一発で煙草も酒も半端なくやるんだろうなって分かるボーカルはいいよね(笑)

―(笑) 演奏はどんなっすか?

だから、騒乱・動乱・混乱だよ。大音量で聴きたい・ライブ行きたい。で、もみくちゃになってさ、やべえ死ぬ。って思いたい。特に[未完了パラサイト]とかね、ギターの進行の快感ぶりに……くらくらする、やっぱりコピーしたいって思わせるギターのいるバンドに外れはない。
まあ、とにかくカッコいいよ。ミッシェルとの共通点があるとすればそこだね。ぐっちゃぐちゃにしたい・されたいっていうカッコよさ。アブなくて、寂しくて、デカい音で…いとおしいんだよ。


THE INRUN PUBLICS / PUBLIC CORE

2012年12月5日発売.定価2,300円(税込み)
1. リアルワールドコンプレックス 2. 踊るメディア 
3. プレイステーション
4. ビューティフルドリーマー 5. enn 6. ロザリーロザリー
7. ハイウェイガール 8. JET LOVE DOLL 9. 未完了パラサイト
10. ダンスオンリアシート 11. お前の部屋 12. カルチャー 
13. 心の解放
発売記念特設サイト http://www.pizzaofdeath.com/inrun/public-core/

(中山裕子)