2013年1月16日水曜日

skillkills.BLACK MUTANT.レビュー

skillkills - 『BLACK MUTANT』〈2012年、最後の魔術〉


際のところ、これはヒップホップなのかどうかも分からない。われわれがヒップホップと聴いて想像する音楽――エミネムからケツメイシ、降神まで大きな振れ幅を持っているであろうそれ――とは絶妙にズレた奇妙な味のするこの作品は、一度口にしてしまったが最後、もうその味を忘れさせない。


 ドラム・ベース・ギター・シンセというバンド編成での演奏がもたらす生々しさと、リリックの抽象性――今らしいカタカナ語、ネットスラング、固有名詞が生贄として大量にぶちこまれ、高速で唱えられ、それぞれの辞書的な意味が崩壊することで生まれるコラージュ――が、ヒップホップ・ミュージックのなかで異質である。というのはもちろん、この奇妙さは「闇」を想起させる魔力を持っている。いつの時代にも必ず存在し、もうひとつの歴史を築いてきた、震災以降この国の音楽からは徐々に蒸発している、魔力。それは、広大な都市の中で清められつつある暗がりをわれわれの脳裏に与えながら、ただただ身体を踊らせて止まない。



 アルバムは、この生々しさと抽象性という魔力を武装した一本の呪文として構成されている。作品全体を貫く低音の力強さ、ドラムの弘中聡氏によれば(信じがたいことに)すべて4拍子であるという不思議なリズムはうねりながら中毒性を生みつつ(この黒い中毒性は、偶然にもほぼ同時期にリリースされたOMSBの『Mr."All Bad" Jordan』からもはっきりと感じ取れる。もちろん、OMSBはバキバキのトラック・具体的なメッセージ性を持つヒップホップの申し子。である点でリアルでのskillkillsとの接点はないと思われるが、このような偶然は必ず意味を持っている。たとえば、マイルス・デイヴィスとマリリン・モンローは同い年で、マイケル・ジャクソンとマドンナも同い年である。というように。)、途中、三味線のサンプリングやシンセが繰り返すインド的なフレーズなどといった異教のトランスが練りこまれることで、魔力は混沌という力を得、身体はその踊る速度を上げざるを得ない。


 そう、結局のところこれはヒップホップという形をとった魔術なのだ。揃いのパーカーを着、フードを被り、まるで秘密結社のような彼らの奇妙さは、いやもはや奇形とすらいえるその素晴らしさは、2012年最後の魔術としてスーフィズムがごとくわれわれの眼を回し、2013年も混沌となろうことを予感させる。








skillkills - 『BLACK MUTANT』
2012.12.26発売
レーベル→BLACK SMOKER RECORDS



0 件のコメント:

コメントを投稿