2013年3月28日木曜日

2013-14 Fall Winter コレクション.まとめ

3月3回目

2013-14 Fall Winter コレクション.BGMまとめ(随時更新)




Moschino/モスキーノ
〈ショーのすべてを英国に捧ぐ〉


BGM
①Oasis - Wonderwall
②The Verve - Bitter Sweet Symphony
③Blur - Girls and Boys
④バグパイプによるスコットランド民謡


 

Prada/プラダ
〈可憐なホラーショー〉


BGM
①不明
②Visage - Fade To Grey
③Gabriel Yared - Des Orages Pour La Nuit
④Blaine L. Reininger - El Mensajero Divino
②Visage - Fade To Grey
⑤Yazoo - winter kills(Electronic Periodic's Sub/Piano Mix)
⑥Visage - Whispers


***



Alexander MaQueen/アレキサンダー・マックイーン
〈母の胎内の神秘性〉


レタポルテ=既製服のショーであることを忘れてしまうような緻密で贅沢な手仕事と、城の奥深くで秘匿されて育った皇女のような雰囲気は、周りの世界とまったく隔絶し、ただただ美しい完璧な5分間を創り出しました。発表されたすべてにため息をついて見とれてしまう。しかし、その至福のときはあっという間に終わりを迎えてしまいます。

30‐40着程度を見せるのが平均的であるパリコレクションにおいて、今回アレキサンダー・マックイーンのショーがたった10着と、非常にコンパクトであったのはなぜか。アメリカ版ヴォーグに理由が興味深い考察と共に載っていたので見てみましょう。

(前略)マックイーンはデザイナーのサラ・バートンが妊娠しているため、豪華絢爛なショーを避け、10着だけの短いショーをおこなうことを選択した。セリーヌのデザイナー、フィービー・フィロも、昨年、バートンとまったく同じ理由でフルのショーを取りやめている。このように、二人の女性が自分の意志で物事を決定したという事実は、彼女達がどんなに重要であるか、素晴らしいか、巨大な権限を持っているかを示している。それぞれのブランドでバートンとフィロが非常に重要である理由は、彼女達が休みを取ることを選べたことからもわかるだろう。マックイーンとセリーヌが巨大なグローバル企業で居続けるためには、結局のところ、世界の情勢に敏感で創造的なタイプ、具体的に言えば、特に女性が、機械の心臓部としてその存在を必要とされているということだ。(後略・以上筆者による意訳)

 ちなみに、日本版ヴォーグのレポートでは、バートンの産休のことについては触れているものの、それ以上のことは書いてありません。やはり、フェミニズム発祥/発症の地アメリカだからこそ、このような些細な出来事からも男女平等の匂いを嗅ぎ取るのでしょうか。


 ショーの内容に戻りましょう。今回は、16世紀の英国"処女王"エリザベス1世と、1900年代初頭に一世を風靡したロシアのバレエ団"バレエ・リュス"がモチーフとなっているようです。
 エリザベス1世は、覚えている方も多いと思いますが、その美しい襞付き襟〈ラフ〉と赤毛のかつらが印象深い肖像で世界史のテキストに載っているイギリスの女王です。彼女は、結婚することなくその生涯を終えたために――たくさんの映画や演劇となっていまでも語り継がれるほど――神秘性と同時にアンビバレンスさを感じさせる魅力的な人物でした。サラ・バートンは、この女王が身につけていた細かな刺繍のドレスと大きなラフに着想を得て、遠目には細かな水玉模様かと思うほど精緻な真珠の刺繍をすべてのデザインにほどこしています。
 真珠はドレスだけでなく、足やデコルテといった部分、さらには伸びたラフが格子状に覆う頭部までを飾っています。そして、漆黒を下地としたミニマルなドレスを経て、後半登場する、純白を羽毛で覆ったドレスの豪奢さは、まさにバレエ・リュスに始まって脈々と現代まで受け継がれるチュチュの女王版。といったおもむきで、この『白鳥の湖』はさぞかし飛ぶのが大変だろう、自分の宝石の重みで…いや女王は自分で飛ぶ必要など無いのだ、だって女王なのだから。とその運命の儚さと共に圧倒的な存在感を放ってやみません。


 BGMは詳細不明ですが、鉦の音に深い四つ打ちが重なってテクノ的でありつつエキゾチック。という、まるで宗教音楽を聴いているような気分になります。ショー全体の荘厳な雰囲気や、会場であるパリ・オペラコミック劇場の美しいバロック様式の内装を考えれば、もうこれしかないという自然な選択だったのでしょうが、このBGMを含め、すべての要素がすばらしい調和をみせ、これから出産というイニシエーションにむかうサラ・バートンの胎内の息吹、霊妙さをわれわれ観客に伝えています。(柿中 薫)

(参考)
日本版ヴォーグのレポート By Jessica Bumpus
http://www.vogue.co.jp/collection/brand/Alexander-McQueen/13aw-rtw/report
アメリカ版ヴォーグのレポート By Mark Holgate
http://www.vogue.com/fashion-week/fall-2013-rtw/alexander-mcqueen/review/


2013年3月19日火曜日

ART-SCHOOL - 『The Alchemist』<34歳は、夢を旅した少年のままに>

2011年のメンバー脱退を受け、2012年の活動からドラムに藤田勇、ベースに中尾憲太郎をサポートメンバーとして配し、アルバム『BABY ACID BABY』の制作と全国ツアーを行った「新生アートスクール」は、今回エンジニアに益子<ROVO>樹を起用して(このエンジニアの変更→音の変化の話はRO69の小野島大さんのディスクレビューに詳しくかつ面白いです。)、完全限定生産である5000枚のミニアルバムを制作しました。なぜ限定なのか?しかも5000枚なのか?という疑問については「マーケティング戦略上、5000枚がもっともコスパがよかったから(よく語意を理解しないまま書いています)」「ミニアルバムって何枚ぐらい売れるのか読めなかったから(マジでこれだったら最高にクールだぜキーオンミュージック)」等、アートスクール側というより音楽会社側の意向っぽい、まあインタビューを読んでも公式サイトを見ても理由は書いていないし、別にどうでもいいことなのですが(笑)、ただ限定生産という以上「いずれ手に入らなくなるのだ」ということをはじめに記しておきます。



イントロのリズム隊の力強く確かなうねり、アウトロに向かって響くサックスの冷たい金属音。1曲目の[Helpless]はそれらの音に乗せてジャケットどおり白黒の情景をひりつくギターに叫ばせる。「Helplessさ Hell Placeさ」と救いのなさを呟く歌詞は、2曲目の[フローズンガール]、3曲目の[The Night is Young]のような誰でも口ずさめる美しいメロディの上でもはっきりと囁かれ痛みを増すようだ。「本当に死にたいと 感じない様に」。
それでも満ち溢れる光のような音像は、BPM上最高潮に達する[Dead 1970]のメタリックさの背後にすら存在して、やがて終わりに向けてその冷たい澄んだ輝きは増していく。

 

 「この作品は『BABY ACID BABY』との2枚組みの一枚で、発売の遅れたDISC2である。」と言っても違和感はないでしょう。リズム隊の雄雄しい低音を踏みしめながら冷たさと重たい密度を感じさせたDISC1『BABY ACID BABY』、その雄雄しい低音はそのままに、輝くようなギターの音の粒と木下理樹の呟きがキラキラと零れ落ちていくようなDISC2『The Alchemist』。DISC1とDISC2をゆるやかに分けるその光の有無は、前述のようにエンジニアの変更があったこと、そして木下理樹のもつ「誰でも口ずさめる美しいメロディ」を生み出す力が今作で解放されたことが要因といえます。

 ともすれば陳腐な明るさや踊れないバラードへと傾いてしまうその「きらきらしさ」。しかし、アートスクールのそれは、絶対的な力――絶望と虚しさだけを誠実に・朴訥に・純粋に歌う木下理樹の詞の力――によって、シューゲイザー・ロックとしての堅牢な形を崩しません。絶望するわれわれを決して忘れず詞を書き続ける木下は、神の怒りをかって石を運び続けるシーシュポスなのか? それともひとりだけ戦争が終わったことを知らない兵隊なのか? あるいは自分で生み出した使命をもって走り続けるメロスなのか? いずれにせよ、このアルバムにはリズム隊の生み出す重厚な音への安心感以上に、憂鬱であることを絶対に否定しない木下の優しさへの安心感があります。

 アルバム最後の曲[Heart Beat]、泣いているときの鼓動のようなビート、それに乗るかすれた木下の声を聴いていると、やがて自分が本当に泣いていることに気付きます。3月11日以降、持たなければならなくなった希望を引き剥がして「Crush & Burn」と叫ぶ声にひたすら愛を感じながら。(中山裕子)


2013年3月13日発売 1,800円
1. Helpless
2. フローズンガール
3. The Night is Young
4. Dead 1970
5. 光の無い部屋
6. Heart Beat

2013年3月7日木曜日

MANNISH BOYS.Ma!Ma!Ma!MANNISH BOYS!!!.レビュー

3月1回目

MANNISH BOYS - 『Ma!Ma!Ma! MANNISH BOYS!!!』<20年後、ベトナムの子どもが聴いたら。>


日開催が発表されたチバユウスケ×中村達也主催のライブイベント・WEEKEND LOVERS'13、チバはThe Birthday、中村は斉藤<やさしくなりたい>和義と2012年に結成したMANNISH BOYSで全国行脚するとの報を受けて、一回聴いただけでそのままになっていたMANNISH BOYSの音源をあわてて引っ張り出してみました。

 そう、これ一回しか聴いていないのです。




音楽が一番幸福だった時代を彷彿とさせる素晴らしいギターリフにのせて、「マ・マ・マ・マニッシュボーイズ!」と中村・斉藤両氏がアルバム名をコールするインストから始まるこのアルバムは、ゲストミュージシャンをいれず(1曲だけSOIL & “PIMP” SESSIONSの秋田ゴールドマンがダブルベースで参加)、斉藤がシンセを弾いたりベースを弾いたり、中村ががっつりコーラスをしたり、二人の台詞の掛け合わせがあったりと二人それぞれの本業では見られない仕掛けが全体に散りばめられている。4曲目[DIRTY BUNNY]でのピコピコ感や7曲目[Oh! Army]のカズー、そして11曲目[ないない!]では斉藤がドラム、中村がギターを弾いてしまう。という暴れっぷりを聴かせながらも、[LINKEYLINE][カーニヴァル]をはじめとして全体では一貫してギターとドラムをがっつりと魅せる一本筋のばしりと通った気持ちのいい一枚。




 やっぱりうまいなあ二人とも。と嘆息すらしてしまう気持ちのいいギターとドラムは、それだけで100回はリピートできるほどなのですが、それを1回聴けばいいや。という気にさせてくれたのは、その「歌詞の強さ」でした

 「原発反対」「腐った政治家」――「MANNISH BOYS(マセたガキ)」というユニット名とは裏腹に、強く真剣なメッセージ。あまりにはっきりと聴こえるものだから、それはどうしても排他的に――たとえば原発推進派の子どもが聴くことを許さないように――リスナーの間に境界線を引いてしまいます。
 もちろん[あいされたいやつらのひとりごと~青春名古屋篇]みたいに、茶目っ気たっぷりの歌詞もありますが(でもこれだってよく考えればかなり排他的ですなあ。)、ハブ ア ジラフ、ジャケットのキリンのように「笑っちゃうよ、まったく」ぐらいの寛容さがもっと全編にわたっていれば、100回。といわず何千回でも聴いただろうと思います。


 だからきっとMANNISH BOYSは、20年後のベトナムの都市の中学生が聴いて夢中になるでしょう。なぜなら彼らには「原発反対」や「腐った政治家」という"日本語の"メッセージは届かず、ただただひたすら素晴らしい二人のリズムとメロディが聴こえるだけだから。(中山裕子)


BGM
①Art Tatum - Moon Song
②Art Tatum & Ben Webster - Where Or When